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次年度への企画検討

 

そろそろ次年度のコンサートシリーズをちゃんと考えないといけない。

 

グレイス・チャペルのオルガンで今とてもやりたい企画の一つに、

オルガン×電子音楽というのがある。

 

私はもともと電子音楽のファンという訳ではなくて、

むしろ電子音は苦手でアナログ音にこだわりたいとさえ思っている。

さらに、電子音楽といってもその言葉に含まれる音楽の幅があまりに広く、

(それは「クラシック」の言葉の曖昧さに似ている)正直なところ

「エレクトロニクス」「エレクトロニカ」「エレクトロ」等何がどう違うのか

よくわからない。(是非教えていただきたい)

 

だけど、音を有機的に扱う電子音楽と、それが楽器音と共に生み出す

音響効果には、面白いものがあると感じている。

私は基本的にアナログ音崇拝者なので、シュトックハウゼンのような、電子音楽でも古典的な

サウンドの方にぐっとくる。

ただ、50年代は電子音楽のみをとことん突き詰めるようなところに面白さがあったが、

最近の現代音楽の作品には、音を有機的に扱う電子音楽と楽器音が混じり合い、

その境界を曖昧にさせるアプローチを耳にする機会が多い気がする。

(ひょっとしてこれも、以前から取られている手法なのかもしれない)

 

さて、企画についてもう少し。

夏のケルンでの公演で、久しぶりに再会した友人に

トビアス・ハーゲドン(Tobias Hagedorn)という電子音楽の作曲家がいる。

実は彼の作品をやりたいと思ってる。もちろん彼に来てもらって。

 

ハーゲドンはケルンで教会音楽と作曲を学んだ後に、

フランクフルトで電子音楽の作曲を学び、

現在はフランクフルトのKunstKulturKirche Allerheiligen( Art culture church Allerheiligen)

というところでオルガニストを務めている。

 

Allerheiligenは日本語では「諸聖人」を意味し、教会の名前として用いられているのだけど、

Kunst Kultur Kircheと銘打っているように、現代芸術と現代音楽のフォーラムとしての

教会というのを牧会の理念に据えている。

 

当教会の司祭が、ケルンの聖ペーター教会で現代芸術・現代音楽を中心にart stationとしての教会をスタート

させた当時の司祭、メネケス司祭の弟子のような方なので、

ケルンのSt.Peterの弟分のような教会とも言える。

オルガニストのハーゲドンもケルンのドミニク・ズステックの弟分(元教え子)であるので、

2つの教会の繋がりは多い。

 

ハーゲドンはオルガンとエレクトロニクスのための作品を近年いくつか発表している。

ドイツではオルガンといえば大抵は教会に設置されているのだが、

コンサートホールより残響のずっと長い教会の会堂に広がっていくオルガンの音と、

スピーカーから流れる電子音楽の音の境目がときどき不明瞭になり、

その溶け合うところがとても面白いと思う。

 

私とトビアス(ハーゲドン)はケルンで同時期に学んでいたのだけれど、

彼は教会音楽科を専攻する前は教職課程を専攻していて、途中で教会音楽科に

転向した。最終的には作曲と電子音楽を学んで今に至る。

そういうプロセスもあり教育的な視点は今も継続して持っていて、

オルガンを学ぶ前に教職課程を修了した私と共鳴する部分が多くある。

今回ざっくりと構想を練っている来日プランにも、

生徒と一緒に電子音楽を用いた実践(ワークショップ的なもの)をしたいという

プランを持ってくれている。

具体的な内容はまだ検討中!

 

それにしても、面白いことをしようと思うとお金が必要!!

チャペルコンサートシリーズ、攻めの姿勢で面白いことを継続していくので

誰かスポンサーになってくださらないだろうかな。

 

 

 

 

左写真は、ハーゲドンがオルガニストを務める

フランクフルトのKunstKulturKircheAllerheiligen。

聖堂内に展示されているのは、Angela Glajcarによる作品、the light within (2011)。

当教会のプログラムプレビューより。

 

 

下は、ハーゲドンのオルガンと電子音楽のための作品、Standpunkte。

今年の夏ケルンでライブで聴いたが、とても面白かった!