同志社大学で、8年ほど前から神学部の学生対象の科目「パイプオルガン演習」という授業を担当させてもらっている。
簡単に言えば「パイプオルガンを弾こう」という授業だけれども履修できるのが神学部の学生だけなので、受講生の演奏の力量にはものすごく幅がある。
ピアノでどこぞのコンクールに出場したことがありますという学生もいたりする。でも反対に鍵盤楽器にあまり触れてこなかったという人もいる。
一応シラバスには「受講するにはバッハのインヴェンションくらいは弾けること」と書いているのだけど、ひょっとしたらインヴェンションが何なのかが伝わっていないのかもしれない。
しかし鍵盤楽器をほとんど触ったことがない、楽譜も読めない、という学生が少なからず受講し、「演奏実技で評価します」という脅しにも屈せず最後までやり遂げたりする。
そして驚いたことに、半年後には本当にペダルもつけて一曲弾けるようになってしまうことが結構あるのだ。
彼らがどのように習熟していくのか、そのプロセスは私には未知の世界であるので、とても興味深い。
そもそもスポーツでも音楽でも、何等かのスキルを身に付ける方法は人によって全く異なるものだけども。
だけど一人一人の個性に目を凝らし、どうアプローチしたら伸びるかな、と試みるのはとても楽しい。
そして見事にそれらが形になっていくのがわかるので、なんとも充実感のある授業をさせてもらっている。
昨年頃から、何故かこの授業のレベルがぐんぐん上がってきている。
もともとグループレッスンという形で(基本的には個人レッスンだけど、グループ全体で内容を共有している)行っていたのが、この科目が最大で2年まで継続して履修できるようにシステムが変わってから受講生の人数もじわっと増え、しかも受講生全員のモチベーションがとても高い。
年末の最終授業日、遅い時間の授業にもかかわらず「このあと直接帰省します」といって授業にしっかり出てくれるとか、熱い。
ハイレベルな演奏をする学生がぽつんと現れるとそれが刺激になるらしく、全体のレベルがどんどんあがっていってるように思う。
今学期はボエルマンのトッカータやメンデルスゾーンのソナタまで弾く人が出てきているので仰天だ。
そういうのも嬉しいけれども、1年前にほぼ初心者でオルガン入門した学生が、ブクステフーデを「いいですね」なんて言ってパッサカリアを半年でじわじわと形にしていく姿とか、本当に涙が出そうに嬉しい気持ちになる。
なんだか親バカの自慢話みたいになってしまった。
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