オルガニストは同じ鍵盤楽器を弾くピアニストと違って楽譜を置いて演奏することが多い。
でも演奏の時に読んでいるのは、音譜というよりもレジストレーションや(オルガンの音色を決める音栓)コンビネーションの操作、またスウェルペダルの踏み込みのタイミングや踏み込む度合いだったり、オルガン特有の指示内容であることが多いかもしれない。
(音譜の方は既に頭に入れている。)
演奏する作品にもよるけど、20世紀以降の作品になると一曲の中で音色が次々に変化するということが多くて、実に忙しい。
私はアシスタントを探す方が大変という理由で、ここ数年基本的にアシスタントは殆ど付けず、自分で操作してしまうことに慣れてしまってきている。
だけど去年のように不慣れな楽器で現代作品を演奏する機会があったりすると、さすがにアシスタントをお願いしないといけなくなる。
そういう時は楽譜を自分用というよりアシスタントにも間違いなく指示を読んでもらえるように、カラフルな付箋なんかを使ったりして楽譜を作る作業をするのです。(写真参照)
で、ここからが本題。
私は日本の音大では学ばず、ドイツでも日本人オルガニストに知り合う機会がなかったので、国民性の問題なのか専門楽器の違いなのかわからないのだけど、アシスタントの反応がドイツに居た時と日本とで随分違うのに驚くのです。
ドイツではほぼいつもオルガニスト同士でヘルプし合っていたので、ストップ操作やコンビネーションの番号は鉛筆で
さっと書き込まれるだけで、本番前に一回通して終わり。
譜めくりに至ってはリハーサルもしないこともある。
正直なところ、アシスタントをする側としては怖くて仕方ない本番も何度もあった。
途中で見失って楽譜をいくら見てもわからないから、オルガニストの顔を見てタイミングを量ったこともある。
結構複雑なところはさすがに何度か練習をして息を合わせておくけれど、それでも本番に大間違いをされたこともある。
「ごめん!」と言われる。でもそれだけ。
つまりオルガニストは大概アバウトなんだな、と思っていた。
日本に帰ってからは、オルガニストネットワークのない私は、いつもオルガニストではない方にアシスタントをお願いしている。高校の教え子(大抵はピアノが弾ける子)、そして東京方面の公演の時はドイツ留学時からお願いすることが多かったバイオリニストのAさん!
どの方も共通して、本番前にとてもきっちり内容をスタディして下さるのです。
それはもう、こちらが恐縮してしまうくらいに。
「楽譜の写真を撮らせてください、事前に読んでおきたいので」と言われることも多い。
こちらはそんな事を言われた事がなくて戸惑い、誠に恐縮してしまう。
アシスタントの「しっかり準備を」という姿勢に対して自分の楽譜がアバウトすぎて大いに反省したことも何度もある。
「こんなことしたことなかったなー」と言いつつ、そのために楽譜を作り替えたこともある。
でもどの人も、パーフェクトに仕事をこなしてくれる。
グレイス・チャペルで弾く時はほぼいつもアシスタントなしで弾いてきたけど、最近高校生の中にオルガンに真剣に取り組みたいという少しずつ現れ、コロナ禍でチャペルを使用するイベントが減ったのをいいことに、個人レッスンを細々と進めていたりする。
すると、アシスタントを経験してもらう事が結構教育的に意味があるかも、という思いが出てきて、
次回の配信版オルガンコンサートには高校生に1人アシスタントをしてもらうつもりでいる。
話を振ってみたら、早速返事がきた。
「楽譜を見に行かせてください。そして写真を撮らせてください。」
本当に、日本のアシスタントを引き受けて下さる方々に頭が下がってしまう。
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