オルガンの為の作品は、圧倒的に中央ヨーロッパの作曲家による作品が多い。
オルガンの楽器が持つ宗教的性格を考えれば当然ではあるのだけど。
教会の中という、音楽全体の世界から見ると閉ざされた空間で発展していったオルガンは、残念ながら他の楽器に比べるとグローバル化するのに時間がかかっているように思う。
敢えてグローバル化することもないのかもしれないけど、これほど世界中の多くのコンサートホールにパイプオルガンが設置されていて、演奏されるレパートリーが中央ヨーロッパ出身の作品に偏るのは勿体なくないだろうか。
実はそういう趣旨の記事を、友人が昨年12月に発行されたオルガン専門誌に書いていた。
(勿体ないという書き方はしていなかったけど。)
うちの学校で今年度チャレンジしている配信版オルガンコンサートの3回目をそろそろ収録しようとしている。
1回目はメシアン、デュプレ、ミュレと20世紀のフランスオルガン音楽でまとめた。
2回目は大平健介さんが、ヴァメスとヨハンセンというドイツの現代作品をバッハと織り交ぜたプログラムで魅せてくれた。
3回目は中央ヨーロッパ以外の世界観を盛り込みたいなと思っている。
そこで選んだのがソフィア・グバイドゥーリナというタタールスタン共和国出身の女性作曲家の作品。
タタールスタン?
私も調べてやっとわかったくらいで、グバイドゥーリナが生まれた時は旧ソ連領だった国だ。
年齢的には前衛全盛期も体験しているはずだけど、ロシアで長年修学していたこともあって、むしろ典型的な前衛のイディオムとは別の世界を見ることができたのかもしれない。
日本でも武満徹に絶賛されたりN響から委嘱されたりと、比較的知名度も高いようだ。
オルガンの為の作品は私の知る限り一つしかないのだけど、ケルンで学んでいた時に何かの演奏会で耳にして、楽譜も自分で見てみたけどその時はそれほど興味が持てなかった。
パンチに欠け、新しさがあるわけでもない、と思った。
ところが、今回向き合ってみると案外結構面白い。
特に、オルガンの風量を減らして演奏してみるととても美しい響きが立ち上がってきたりする。
グバイドゥーリナは当然、オルガンの風量が可変できるなんて可能性は知らなかっただろうけど、
こうやって演奏することを望んでいたに違いないような気さえしてしまう。
シンプルな構成で、柔らかな響きと冷たく硬い世界が混合する。
天と地に分かれていくような世界観が、ヨーロッパというよりアジア的な感じを感じさせる。
興味が出てきて、グバイドゥーリナの他の作品を知りたいと思った。
YouTubeで見てみると、ドゥダメルが指揮をするベルリンフィルのデジタルコンサート、ダイジェスト版の「Glourious Percussion」が面白いけど、グバイドゥーリナらしさを堪能するなら、やはり彼女の国際デビューを決定付けた作品、「Offertorium」(1980)を聴くべきである。
オッフェルトリウムと読むが、カトリックのミサの奉納唱のことを指す。
とても集中力の高い作品だ。
彼女を擁護してこの作品を世界中で演奏したというギドン・クレーメルのソロが素晴らしい。
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