最後に、このオルガンを製作したドイツのメーカー、ヴァイムス社についてのご紹介。
本校のオルガンがアジア第一号になるので、まだ日本国内ではあまり知られていないメーカーです。
(2019年現在、もうすぐ東京に第2号が完成します。)
ヴァイムス社はヴァイムス家で代々引き継いできた家族創業のメーカーです。(ただし、世襲制というわけではないようです)1927年創業なので、創業90年を越えます。工房があるのはドイツ中西部アイフェル地方にあるヘレンタール (Hellenthal)というところで、私の印象でもケルン近郊の地域には珍しく、アイフェルは自然に恵まれた山間です。冬はとても冷え込みます。
地理的にはベルギーやオランダに近く、例えばバッハが活躍した中部ドイツやブクステフーデに代表される北ドイツ、またフローベルガ―などが弾いた南ドイツのオルガンともまた異なる独自の個性を、楽器製造にも持っています。
ドイツにおけるオルガン製造は、ドイツのビールやワインと同様に地域性が強く、メーカーについても元々は「地域のメーカー」として機能していたように思います。ヴァイムス社も同様、アイフェル地方からケルン、デュッセルドルフ、アーヘンなど工房の比較的近郊に多くの楽器があります。
◆ドイツ国内のヴァイムス社のオルガン
ヴァイムス社の特徴だと思うのは、手がけるオルガンの幅がとても広い事です。
写真左上はブラオヴァイラー (Brauweiler) の聖ニコライ教会のオルガン。
バロックオルガンとして製作されましたが、修復ではなく新しいオルガンです。
とてもバランスが良く、美しい響き!惚れ込みます。弾くとまた、とても気持ちが良いのです。
右下はシュタインフェルド (Steinfeld) の修道院のバジリカにあるオルガンです。
こちらは修復です。ここで初めてフランスバロックの作品のレッスンを受け、
衝撃を受けたのを今でも覚えています。
これら2つのオルガンを見ると、このメーカーはバロックオルガンを得意としてるのかな、と
思うのですが、すごいのはここから。
左下はマックス・レーガーの出身地、南ドイツのヴァイデン(Weiden)にある
その名も「マックス・レーガー記念オルガン」。
そして右上は、近年斬新に「改築」されたツゥルピッヒ (Zülpich) の聖ペーター教会のオルガン。
本校のオルガンにも採用されたタッチ・ディスプレイや様々なプログラミング技術の先行例は
このオルガンにあったのでした。
つまり、幅が広い!そして技術的にも常に「何ができるか」研究されている印象を受けます。
オルガンの音色も当然楽器によって全く異なり、それらはそれぞれの楽器によってベストなキャラクターを
引き出すべく製作されている、という感じがします。
◆工房にて
私も目の前で見学させてもらって面白かったものをご紹介。
オルガンの金属の管は、ヴァイムス社の場合、社内の工房で作られています。
鉛と錫を合わせて溶かして延ばし、板にする。そしてそれを丸めて管を作っているのです。
動画をご覧ください。